第4章の後半では『ラ・クンパルシータ』をめぐる歴史にページを割いています。一般的にタンゴと言われて、いちばんに思い浮かべられるアノ曲です。

タンゴの中のタンゴといわれ、世界のポピュラー音楽の中でも、いちばん多種類のレコードが出て、今でもタンゴのLPでこの曲が入っていると売り上げが何割か上がるという『ラ・クンパルシータ』も、タンゴが劇場の歌でヒットする時代がなかったら完全な忘却の中に沈んでいたろう。

「カーニバルの小ちゃな仮装集団」という意味のこの曲については、次々にエピソードが探しだされ、諸説紛々といったところ。

作曲者は、モンテビデオ屈指のキャバレーの経営者の息子、ヘラルド君。1914年頃のこと。ちゃんと音楽を学んでもいなかった、工科大学1年生のヘラルド君が一本指でピアノを叩き、ウルグアイの著名なバンドリーダー、カルロス・ワーレンに頼んで簡単な楽譜を書いてもらった。

そして、16年か17年に、タンゴの巨匠ロベルト・フィルポの楽団がモンテビデオに来たとき、この曲をやってもらった。フィルポだって商売だから、大キャバレーの主人の息子が作った曲は義理でもやらずにはいられなかった。

さらに、この時、フィルポによってアレンジを加えられたり、その後7年の時を経て劇場タンゴ全盛の時代、『君知るや』というタイトルで・・・。

ドラ息子の道楽がタンゴ史上に残る名曲となっていくというこの話、実に面白いです。

小松亮太さんの演奏で。

ガルデルはこんな風に。

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2 Responses so far.

  1. El Bohemio より:

    クンパルシータはロベルト・フィルポが作曲したのも同然と彼は告白していた。ヘラルドはフィルポの助けを認めず、共同作者としての名前を拒否した。恩知らず者!

    • tango100 より:

      なるほど。「アレンジを加えた」程度ではなく、ほぼフィルポが作ったようなものだったのですね!面白い。

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